「『杏樹がお嫁に行くときは大変ね』って」

「杏樹がお嫁に行くときの事は今でも考えたくないけど、その時は覚悟を決めるよ」という真剣な顔で言う父。

「お父さん、あと8年後には結婚するからその時までには覚悟決めてね」と釘をさす私。

そんな二人の事を見ていた母は笑っていた。

「今ならお義父さんの気持ちが嫌でも分かるよ」とさらに落ち込む父。

母方の祖父は母の事を溺愛しているが、母に似ている私の事も溺愛している。

私は母に「おじいちゃんに結婚の挨拶をするとき大変だったの」と尋ねた。

「もう大変だったのよ お父さん『絶対に会わない』って部屋から出てこないの」

「…」

それを聞いた時、お父さんも同じことをしそうだと思った。

「3時間後にようやく出てきて、そこから何時間も説得してようやくお許しが出たの。」

「それって結婚の許しをもらう為に1日かかったの?」

「そうよ 午前中に行って午後からはデートしようと思ったのに」

「大変だったけど、本当に理恵と結婚したかったから頑張ったよ」と笑顔でいうお父さん。

それを言われたお母さんは頬を赤らめていた。

「私、お父さんとお母さんの子どもで本当に良かった 将来はお父さんとお母さんみたいな夫婦になりたい。でね、お母さんみたいなお母さんになるの」

これは幼い頃か思っていたこと。

お互いを尊重して助け合って生きている両親が大好きだった。

母は涙ぐみながら「杏樹ありがとう」と言った。