もう一度、逞しい腕が優しく包み込む。
微かなホワイトムスクの香りと、背中にまわる腕の温もりが冷えた心を溶かしていく。
「 …………"好きだ" 。俺の心の内には、
ずっと君しかいなかった。」
自身に向けて欲しかった言葉を囁かれ、全身が心を持ったかのように熱を帯びる。
「私も、ずっと考えてました。」
あの日の、深夜の回答を。
───「心配するのは上司だから……だけじゃないって言ったら、どうする?」
「上司として心配してくれるのは嬉しいです。
でも、 "それ以上に想ってくれてるから"
だったらいいのに、って。
私がそう想うようになってました。」
自分の精一杯の愛しさを、震える声にのせる。
「ずっと見ていて下さって、ありがとうございます。 私も、そんな貴方が好きです。」
そう告白した瞬間、
彼の腕の力が、より一層強まった。
日付が変わって25日。
人生で最も運命的なクリスマスがやって来た。

