「もう…何?あのオジサン、誰なのよ。」


柴田が帰り、三津代は混乱しながら考えた。


私に、何かが起こってるんだ。

私の知らない人が、私を知ってる。

私は、岸三津代じゃないの?

三津代はすっかり自信が無くなっていた。


そうだ…鏡。


鏡みなくちゃ。


三津代は起き上がろうとした。

「イタっ。」


足に激痛が走った。

三津代の足には、包帯が巻かれていた。

しかしいてもたってもいられず、何とか身体を起こして、片足を引きずりながら歩いた。


それを見た看護師が慌てて近寄ってきて、

「か…き、岸さん!まだ起き上がってはだめです!」
三津代をベッドに戻そうとする。
三津代はそれを振り払った。

「大丈夫です!足痛いけど歩けるし。…お手洗い、我慢できません!!」


止める看護師を押し切って、三津代はトイレに向かった。

「あ…岸さん!待ってください、先生に止められてるんですよ!」


「…どうして?」

何のために?

「経過が良くなるまで、病室をでちゃいけないって…。」

看護師は口ごもった。

「私なら大丈夫です!何とか歩けるし。

トイレすら行けないなんて、おかしいです!」


三津代はトイレに駆け込んで、鏡を覗き込んだ。


「え…。」


鏡を覗いた三津代は、言葉を失った。