あ…。


夢だった。


小林君。

そうだよ、今日小林君の誕生日だ。


会いたいな。


心配…してるよね。


目を開けた三津代の視界には、さっきよりずいぶんトーンの低そうな柴田が見えた。

「三津代さん。目が覚めましたか。」


「あ…はい。」

柴田はずいぶんとシリアスな顔をしている。


「急に病室にいて、訳が分からなかったでしょう。
まぁゆっくり、ゆっくりいきましょうね。」


柴田はそう言うと、三津代の手をぎゅっと握った。


瞬時に鳥肌が立った三津代は、慌てて手を離した。

「あの…すみませんが、あなたは一体…
もしかして、私を助けていただいた方でしょうか?」

妙に馴れ馴れしい柴田を警戒して 三津代は聞いた。

「三津代さん…。」


柴田はうつむいた。

そして驚くことに、柴田は泣き出したのだ。

はぁ?なぜ泣くの、この人…。


「僕を、覚えていないんですね…。

三津代さん…。

三津代さんは僕にとって、
かけがえのない人です。」

泣き出した柴田に何の感情も抱けず、また、自分が誰なのか分からなくなり

三津代はまた頭痛がするようだった。


「…ごめんなさい、多分あなたは悪くないと思うのですが、
私にはあなたがどなたか、全く分からないのです。

だから、いきなりそんな風に言われても、困るってゆうか。」

柴田はガックリと肩を落とした。


「三津代さん…。

今日はもう、帰ります。

また明日来ますから。」


そう言うと柴田は、静かに病室を出た。