「あ…でも
私柴田さんに…借金」


三津代はつい、口に出してしまった。

女はまくし立てる。
「アンタ、あのオヤジに金借りたの?!
なんであたしに言わないのよ~。

あたしだって余裕は無いけど、あんなオヤジに借りるくらいなら、あたしが貸したわよ。

いくら借りたの?」

そんなの…知らない。

「じゅ…10万円?」

適当に、自分の中での大金を言ってみた。

女が気の抜けた顔に変わる。

「なに、そんなもん?

あんた生活苦しいのかい?
とっとと返しなさいよそんな金。面倒起きるわよ。」

そう言って女は、細長いタバコを取りだし、火をつけた。


「あんた、今日店出られる?」

店?
私の仕事先の人なのかな…。

どんな仕事かは、女の出で立ちで大体想像がつく。

三津代はひそかに、そして深く落胆した。

「いえ…あの、体調悪くて入院してて。

申し訳ないですが、しばらく休ませて下さい。
またこちらから…連絡します。」

女は機嫌の悪そうな顔で言った。

「あんたもね、もう若くないんだから。ちゃんとしなさいよね。

うちも常連で持ってるような店だけど…甘くはないのよ。わかってる?」