部屋の鍵を開けて見えたのは、意外過ぎる光景だった。

物が全然無くて、ガランとしている。

最低限の家具しか置いてない、殺風景な部屋。

冷蔵庫すらない。


「何よ雅子ちゃん、家財道具売っぱらっちゃったの?
それとも引っ越しでもすんの?」


女は舐めるように部屋を見渡した。

「あ…はい、引っ越しです。」

とっさに嘘をついてしまった。

「あらそう。なにアンタ、男でもできた?

あの柴田のジジイにしつこくされてるみたいだけど、あいつだけは止めときなさいよ。

前にも店の女の子、ストーカーみたいにまとわれて大変だったんだから。


ほんっとに諦め悪いのよ、汚い顔してさぁ。」


そんな女の顔も、近くでは見れたものではなかった。