女は何度か「雅子」とゆう名を怒鳴るように呼んだあと、諦めて、引きかえそうと振り返った。

「ギャアッ!

わぁ、雅子ちゃん!
ちょっとぉ、
うしろにいるならいるって言いなさいよぉ。あ~驚いた。

何日も連絡ないから心配になって来たのよ。」


厚化粧の女は、三津代のことを雅子と呼んでいるようだ。


「あの…私の名前、雅子じゃなくて三津代なんですが。」

女はため息をついた。


「やあねぇ。あんたの本名なんか誰も聞いてないわよ。

それよりお茶一杯ごちそうしてくれない?大声出したら喉渇いちゃったわ。」

三津代はできればその女を家にあげたくなかったが、とくに裏はなさそうだし、何より迫力に負けて断れなかった。

「どうぞ…。」