なつめと別れてから、地図を頼りに30分ほど歩いた。

寂れた商店街の脇、クリーニング屋の横にもっと寂れたそのマンションはあった。


『メゾン高田』


あった。


三階建ての古びたマンション。

「203号室…ね」

マンション入り口脇の郵便受けには、何やら紙類がぎゅうぎゅうにつまっている。

三津代は無惨な郵便ポストを無視して、2階へ上がった。


すると「メゾン高田203号室」の前には見知らぬ女が立っていた。
女は、周囲を気にせず、ドアをガンガン叩いている。

かなり年配だったが、化粧と香水の匂いがプンプンするような、明らかに夜の女だった。


「雅子ちゃ~ん!

雅子ちゃん!!
ちょっと、いないの?!
大丈夫?
…死んでんじゃないかしら」