「…ごめんね。

わたしだめなお母さんだね。ごめんなさい…。」

三津代は抱きしめるかわりに謝った。

「三津代さん。

謝らないで。
私はお母さんをうらんだりしてないし、

お母さんはお母さんなりに、精一杯生きてたんだから。」


その瞬間、なつめのか細い腕が、三津代の肩を包んだ。

ぎこちなくて、こわばっていたが、優しく温かい腕だった。


「ありがとう…
なつめちゃん。ありがとう…!」


不思議だった。


三津代は自分の中に、今まで感じたことのない母性の存在を見た。


自分よりも大事な存在がいる。


そんなことを思ったのは、生まれて初めてのことだった。