5秒ほどの沈黙のあと、

「…あたしだけど。」

不機嫌な女の子の声が聞こえた。

あたしっていわれても…わかんないよ~。


「あの…失礼ですがどなたでしょうか?」

電話の声が、さらに不機嫌に変わる。


「声も忘れちゃったんですか?
…入院したって聞いて一応電話したんだけど、元気なら別にいいです。さようなら。」

苛立ちと共に一方的に切れた。

な…なに。怒ってたし…。
あ…

今のもしかして…なつめ?

だって…私に声がそっくりだった。

うん、絶対なつめだ。


娘。私の娘。


なんか信じられないなぁ…。

産んだ覚え、ないし。

でも。

今の私を知ってるなつめ。

この状況を、なんとかわかってもらえないだろうか?


親子関係はかなり悪そうだけど…

今頼れるのは、なつめしかいない。三津代はそう思った。


三津代は着信履歴から、なつめに電話をかけなおした。