階段なんて。落ちたかな?


とゆうより、階段どころか何にも思い出せない。


階段から落ちるまでの生活も、


この禿げ散らかった“柴田”とゆうオジサンも。


学校の用務員さんとかかな。作業服ぽいの着てるから。
この人が、階段から落ちた私を助けてくれたとか。


でも…普通付き添ったりはしないよね。

何か私を知ってるみたいだし。


「あ、先生!こっちこっち~」
柴田はでかい声で、通りかかった医者を呼び止めた。

眼鏡の医者がこちらに向かってくる。

「加藤さん。気がつきましたか。ご気分はいかがですか?」

加藤?


名前間違えてるし…加藤って。全然違うよ。


「すみません、私は岸ですが。」


三津代がそう言うと 医者はきょとんという顔になった。

看護師と顔を見合せてから

「…あ、あぁ。岸さんでしたね。すみません、失礼しました。」

平静を装おって医者はそう言った。

「じゃあ、念のため検温と点滴を変えますね。」


看護師に指示をすると、医者はポカーンとした顔の柴田をさりげなく呼んだ。

「では岸さん、安静になさって下さいね。」

柴田を連れて、医者は病室を出た。

何かお医者さん、動揺してたよね。

…あたし、何か変なこと言ったかな?

加藤って…誰なんだろう。

三津代は状況が全くのみ込めなかった。


体が重い。


頭も回らない。