「…お金?」
「私は、あなたにお金を借りていたんですか?」


嫌な予感が三津代の胸を苦しくした。


「まぁ…そんなこと、本当は引き合いに出したくないんですけどね。

三津代さん、困っていたようだったから…。

確かにお貸ししました。


で、でも私は三津代さんを心から幸せにしたかったんです。

だからお金のことは、どってことないんです。

私は独り身で、使うのはたばこ銭くらいなもんですから。」


この純粋なおじさんは、大人になった私を好きだったのか。


…だけど、私はこの人を、好きだったの?


確かに人は良さそうだけど…。

「…ごめんなさい。分からないけど、申し訳なく思います。

いつかの私がした事なんですよね…。

事情もわからないし
すぐにとはいかない事だと思いますが、お金は必ず、いつの日かお返しします。」

借りたものは返す。そのくらいの常識は、三津代にもあった。


柴田はまた、めそめそとし出した。


「あぁ…すいません。

15歳のお嬢さんにそんなこと…

大人の私こそお恥ずかしいです…。

だけどね、大丈夫ですよ。
あなたは心配いりません。私に全部身を任せて下さい。三津代さんが15歳だろうと、私の気持ちは変わりませんから!」


柴田はなぜか、目をキラキラさせている。


三津代の心を、暗雲が覆った。