…寝れない。


三津代の目は、閉じさえしなかった。


私、おばさんになってしまったのか…。

だけど、頭の中はまだ15歳の秋。本当は高校2年にすらなってない。

本当に記憶がないのだ。


自分の人生がどんなものだったのか、それを知らずに生きたりできるんだろうか?

今の私は、中卒のようなもんだ。

賢くないおばさん。何だか自分の事だと思えない。


それに…



小林君の事が、気になっていた。


私と小林君は、付き合いはじめていた。


私が事故に遇った日は、小林君の誕生日だった。


私が取りに帰ったのはお弁当だけしゃない。


小林君のプレゼントをかばんに入れ忘れ、それを取りに帰るのが目的だった。


それがなければ、お弁当だけなら引き返さなかっただろう。



今どき流行らないような、手編みのマフラー。


手先は器用だったから、小林が欲しいと言ってたブランドのマフラー、


何度も見に行って、忠実に再現した。


うまくできたの。


喜んで欲しかった。



8月に初めてキスをして


それから、手を繋いで歩くようになった。


勉強を忘れるくらい、小林君が好きだった。