『桜庭さん、ちょっと借りるね』 「えっ、ちょっ……」 ゆきちゃんが私をかばうようにしていたが、その隙間からリカちゃんは、私の腕をつかむと教室を足早に出ていく。私は引っ張られながら、小走りになった。 ――着いた先は女子トイレ。しかもあまり利用されない、上の階の端っこにある女子トイレだった。 「リ、リカちゃん……ここ……!」 口を開いてリカちゃんの名前を呼ぼうとすると、後ろから数人の足音が聞こえた。