――あ、また胸が少しキュンと鳴った気がした。


成瀬君の本当の笑顔。私はきっと、この笑顔が見たくて、彼を気にしてるのかもしれない。


『悲しい顔作戦もダメか~。こころちゃん、結構面白いね。好きになっちゃうかも』


彼はふうっと息を吐いて「先行くね」と、私に手を振ってホームから姿を消した。


――はあ、私は何をしてるか…。あんなこと言うつもりじゃなかったのに、本当の成瀬君ってなんだよ~仲良くなりたいって…まるでやっぱり、私が成瀬君のこと好きみたいじゃない。


「ああ~」


一人残されたホームで、私はまた大きな声を上げる。やばい!と思って、手で口を覆ったが、誰にも聞こえてなかったみたいで、胸をなでおろしたのだった。