縛られし者





4年前彼に黙って渡米した時も、それがバレた時彼はわざわざ渡米して私のところにやって来て、どうして自分に何も言ってくれなかったのとか、もうとにかくそんなことを何時間も何時間も言われ続けました。



あれにはさすがの私も疲れました。


今思い返しても、彼の言葉が呪文か何かのように頭にリピート再生されます。



その日の夜、私はとても恐ろしい悪夢を見ました。



そして、散々言われていたのに私は彼に黙ったまま帰国をしているので、見つかったらもう悲劇としか言いようがありません。



そのようなわけで、私は今彼に見つかってしまうのを極力避けたいのです。



「紫雨さん、貴方のヴァイオリンの腕は突出しています。ピアノもかなりの腕前でしたが、ヴァイオリンも負けず劣らずに卓越しています。是非コンクールへ参加してみてください。」

「私はコンクールに出場したいとかいう思いはないのですが…………ないのですが。」



よく考えてみれば、これは一条聖斗先生にあれを頼む絶好のチャンスではないのですか?