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30分程かけて弾き終わり、一息ついて前を見ると、何故か音無詩音先生も一条聖斗先生も目を見開いたまま固まっていました。
「どうかされましたか?」
やけに真剣な表情と様子の音無詩音先生と一条聖斗先生。
「紫雨………お前、マジでコンクールに出ろ。」
「は?」
「私も貴方の音楽コンクールへの参加を強く勧めます。特にヴァイオリン部門を。」
どうしてこうなった………。
「いえ、私は………。」
全日本学生音楽コンクールと言えば、小学生から大学生までの学生が参加する最大規模学生音楽コンクール。
つまり、音楽関係で高い才能と技術を持っている彼も出場している可能性が高いわけなのですが、私としては今彼に見つかるのは遠慮したいのです。

