それ以前に、急に話の方向転換をするのならわかりやすいように指示器を出してもらいたかったです。
「今ここで弾いてみてください。」
「何故……………いえ、わかりました。」
「ヴァイオリンはこれを使ってください。それと、曲はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64で。」
・・・・・・・・・・・
今はもう、何を言っても無駄だと思うので黙って従っておきましょう。
「メンデルスゾーン様作曲のヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64ですね。」
この曲は三大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれるくらいに有名な曲です。
穏やかな情緒とバランスのとれた形式、そして何よりも美しい旋律。
そのことを意識しながら、私はこの曲の楽譜を思い出しながらヴァイオリンを弾き始めました。

