縛られし者





「ともかく、まずはこの書類を片付けることが先決ですよ。もう少ししたら瑛斗様が来られますから、それまでの辛抱です。それまで頑張れますね?」



八雲瑛斗様。



彼は長年お父様の秘書を務めており、会社や屋敷を脱走したお父様を他の誰よりも早く捕獲することの出来るお方。



瑛斗様はお父様の秘書とは思えないくらい優秀ですから、この書類も明日までにはどうにかなるようにしてくださるでしょう。



「子供に言い聞かせるように言うのやめて!」

「それでしたら、貴方様は仕事をエスケープせず、真面目にしっかり、働くことができますか?」

「それは無理………かな?茜に会いに行きたいし。」

「茜?あぁ、お父様の愛人……ではなく、私の未来の母親になるかもしれない方ですか………。確か、如月茜様でしたっけ?出会ってまだ1年ですのに、随分と仲良くなりましたね。それに子持ちだとか。」

「ちょっ、ちょっと待った!俺、茜と言っただけで如月だなんて一言も言ってないのに何で茜の名字を知っているんだ?それに、出会って1年だなんて何で知ってるの。それに子持ちってことも。」

「もちろん調べましたから。」

「娘の優秀さが時々怖い!」