「ここがお前の教室だ。ここまでは覚えられたか?」

「はい、大丈夫です。」



いつも通り当たり障りのない受け答えをすると、何故か何とも言えないような表情をされました。



「………………お前、そんな作り笑いばかりしてて楽しいのか?」

「……楽しいかと言われれば何も楽しくはありませんが。」

「そうか、だったらやめるんだな。そんな作り笑いばかりしていると、いつか本当の笑い方を忘れてしまうぞ。」

「っ………。」



初めて会った相手に対して随分と無遠慮なその言葉に、私は何も言い返せませんでした。



『作り笑いばかりしていると、本当の笑い方を忘れてしまうわ。』



私の頭の中に流れる優しげなあの人の優しい声。



この一条聖斗と言う人は、あの人と同じような考え方をするのですね。



「…………そう、ですね。そうなんです。そうなんですけど、もうわからなくなってしまいました。でも、ありがとうございます、一条聖斗先生。」



こんな人が居る学校に通うように言ったお父様に初めて感謝をしたことは、お父様には秘密です。