これは覚えやすかったから覚えてる。
「これはきちんと覚えられているようですね。それなりにマナー講座も進んでいるようで何よりです。
では少々お待ちください。カラードレスの最終確認をしますので。梓さんはここに居てください。」
そう言うなり、潔音ちゃんは後ろに控えていた梓さんと呼ばれた人から荷物を受け取って、隣の部屋に入って行った。
「なぁ片桐。潔音、いつになく怒ってないか?と言うか、機嫌がものすっごく悪いんだけど。」
「それは当然のことでしょう。何せ、叱られるまで仕事もしないで遊んでいるどこかの誰かに代わり、日々寝る間も惜しんで仕事をなさっている潔音様の仕事をさらに増やしたのは、他でもない旦那様ご自身ではありませんか。
そしてそのことと学校に行かせるなどという、さらに忙しくなるようなことをさせようとしているのも旦那様です。
潔音様は、そんな旦那様に制裁を加える時間すら惜しいと、その存在を無視することにしたようです。それを空気と雰囲気の読めない旦那様が、潔音様の話を遮る形で話しかけたりするから邪魔と言われたんですよ。
何か反論出来ますか?」
「出来ません。ごめんなさい」
この梓さんって人、潔音ちゃんが相当大事なんだろうなぁと思う。

