無表情ながらも、片桐さんの顔と目には俺が羨ましいとはっきり表れていた。
はっきり言って、いたたまれない。
「潔音様は、そんな一条様の言葉になら少しは耳を貸すかもしれません。そのようなわけで、マンションのお隣同士、教師と生徒の間柄だと思って、潔音様をよろしくお願い致します。」
「まぁ、あんな食生活をしているようなやつを放っておくわけにもいきませんし………紫雨がどこまで俺の言葉に耳を貸すかわからないこの状況では、任せてくださいとは言えませんが………努力はしてみます。」
「よろしくお願い致します。」
深々と頭を下げる片桐さんは、確かに紫雨のことが大切なのだろうと思わされる程必死な感じだった。
「潔音様にはお会いしたいですし看病もしたいのですが、私は紫雨家の屋敷のメイド長でもある身。帰らなければいけませんのでそろそろお暇致します。」
やっぱりこの人、表情と着物姿でメイドという響きが全く似合わない。
「それでは、私はこれで。」
綺麗にお辞儀をして去って行った片桐さんの凛とした後ろ姿が、紫雨の後ろ姿とそっくりだった。
「やっぱ、紫雨はあの人を見て育ったんだから似てて当然か………。」

