縛られし者





俺、あの時紫雨に何を言った………?


どんなに思い返しても、ただ普通に校内の説明をしている記憶しか思い出せない。



「それを聞いて、私は一条様だけが潔音様を救える唯一の方だと思いました。その様子から察するに、一条様は全く意識せず当たり前に出た言葉だったのですね。………ですが、それが潔音様には嬉しかったのでしょう。
本当に何年ぶりでしょうか………、潔音様の、心から嬉しそうに笑った姿を見たのは………。」



片桐さんは、目尻に涙を浮かべながらそう言った。


それは、それほど嬉しかったのだということの表れでもあり、それほど紫雨を心配していたということでもあるのだろう。



「片桐さんだって、紫雨を救うことは出来るのでは?紫雨は父親にすらこのマンションに住んでいることを教えていない。それなのに貴女は知っているのだから、紫雨に信頼されているんでしょう?」



・・・・・・・・・



「………私には、出来ません。
私は、潔音様の過去をほぼ全て把握しております。潔音様と旦那様との間にある確執のことも、潔香様と潔音様との間で起こったことも、梨沙様と一紗様が亡くなられた原因も、全てです。」