受け取った体温時計には、39度とある。
「紫雨、頭が痛い以外で他に何か症状はあるか?」
「全体的に倦怠感が凄いです。あぁ、全身倦怠感というやつです。」
高熱を伴う急激な発症に全身倦怠感………。
「これは風邪と言うよりインフルエンザか………?
紫雨、薬は持ってるのか?」
「えぇ、持っています。でも私の部屋にあるので帰ってから飲みます。」
「アホかお前は。39度の大熱を出している奴をふらふらと歩かせられるか。平気そうにしてるが、お前今相当しんどいだろ。無理するな。」
口調もいつも通りを装っているが、やはり声がいつもより小さい。
それに表情だって、笑顔を振りまいている普段のより少し固い。
「どうして、一条聖斗先生には………バレて、しまうのでしょうか………。」
平静を装っていた顔をやめれば、紫雨は途端に口調がしんどそうになり、表情も険しくなった。

