縛られし者





獲物と言っても、おそらく紫雨に惚れたとかではなく、ただ単に桐生嶺二の理想に沿った答えを言ったことによって、獲物と認定されたのだろう。



紫雨も可哀想に………。



「一条聖斗先生、私達はそろそろ帰りましょう。音無詩音先生も、そろそろ帰り支度をしているはずですし。」

「そうだな。」



少し機嫌の良さそうな紫雨と共に会場を出ると、ちょうど音無先生も会場から出て来た。



「紫雨さん、今日はお疲れ様でした。素晴らしい演奏でしたよ。この調子で、次の地方大会本選も頑張ってください。」

「はい。」

「音無先生、帰りはどうしますか?」

「私がヴァイオリニストだった頃の知り合いが審査員の中に居まして、その人の車に乗せてもらうことになったので帰りは紫雨さんだけお願いします。」

「わかりました。紫雨、行くぞ。」



音無先生を置いてさっさと駐車場に向かい、車に乗ってマンションに帰る。