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これはただの地方大会の予選にすぎないが、この音楽コンクール自体が大きな大会の為世間からも注目されていて、準決勝からは家族だけでなく一般の人間もコンクールを見られるようになっている。
勿論、予選落ちした奴らもその中に混じっていた。
そいつらは、先程行われた一人の人間のヴァイオリンの演奏に未だに心を奪われたままだった。
その一人の人間とは、聞くまでもなく紫雨潔音のことだ。
紫雨と準決勝で勝敗を競った朝比奈美琴が、ステージ袖で驚愕した顔で紫雨を見つめていたのが印象的だった。
「潔音、優勝おめでとうございます。この霜月陽華、潔音の演奏する姿を見て惚れ直し………いえ、貴女への愛がより一層深まりました。やはり貴女は素晴らしいです。」
「ありがとうございます。」
例の如く紫雨の手を握りながらそう言う霜月陽華は、負けた人間らしからぬ清々しい程笑顔だった。

