今、涙を浮かべながら私の両手を握り締めているこの方は、この音楽コンクールヴァイオリン部門で一昨年、昨年と2年連続優勝を果たした霜月陽華様です。
そして、私が会いたくなかった人とはこの方のことなのです。
霜月様は黒くて長い背中まである髪を後ろで束ねており、狐顔の男性に使うには不釣り合いかもしれませんが、美人なお顔立ちをしています。
「お久しぶりですね、霜月様。」
「そのような他人行儀ではなく、陽華とお呼びくださいといつも言っているではありませんか!」
「いえ、まぁ、それはその………。」
人を呼び捨てにするのは苦手なんですと、私もいつも言っています。
「陽華ちゃん、いきなり走り出したりしてどうしたの?」
この方は確か………音楽コンクールピアノ部門の一昨年、昨年の優勝者の桐生嶺二様。
霜月様とは幼馴染の方ですね。

