そんな中で現れた、自分を紫雨財閥の娘としてではなく紫雨潔音として見てくれる梨沙と一紗は、それはもう大切だっただろう。
そして、そんな2人を喪った時の哀しみと喪失感は誰にもわからないだろう。
そんな子に、俺が安易な言葉をかけられない………。
「あ、もうここまでで大丈夫ですよ。」
「いや、だが………。」
「大丈夫です。ここだけの話ですが、私は今家を出て一人暮らしをしているんです。ですのでここから更に遠くなるんです。そんなところまでついて来てもらうと言うのは気が引けます。」
「………わかった。」
全く引く気の感じないその様子に、それ以上は諦めることにした。
「それでは。あぁ1つだけ言い忘れたことが………。梨沙さんと一紗のお墓に、また今度私の都合がつき次第ご案内いたします。」
「墓……?墓なんてあるのか?」
「勿論です。それでは、今度こそ失礼したします。」
「お墓、あったのか………。」
指輪と墓があるだけでも、俺は救われた。
なら、彼女は誰が救うんだろうな………。
〜徹side end〜

