「言っておきますけど、私はあのことがある前からお父様のことを怨んでいましたよ。10年前から、ですからね。」
そうか………、2人が死んだのは9年前だからその前から………。
「何があったのか気になりますか?」
「え?いや………。」
俺、そんなに顔に出てるのか?
さっきから思ってること全て見透かされてるような………。
「まぁ簡単な話、私はお父様に見捨てられたんです。お父様にとって私は、取るに足らない存在だった、それだけです。
お父様に憎しみを覚えるようになったのは4歳の頃からですが、お父様には何を期待しても無駄だと諦め、そして不信感を抱くようになったのは3歳の頃からでした。あ、その不信感の分も加算すると11年間になりますね。
とまぁそんな感じで、私はお父様のことを父親とは思っていません。ついでに言うと、お母様のことも人柄は好きでしたけど母親とは思っていませんでした。
だからこそ、私に優しく暖かい笑顔を向けてくれた梨沙さんや、曇のない明るい笑顔を向けてくれた一紗のことが大切だったんです。私、紫雨財閥の娘なのでそう言う顔を向けてもらえたことってあまりなくて………。欲に塗れた笑顔ならよく見ていたんですけどね。」

