と言うか、説得力が皆無って………。
「私は10年間、とある人間に飽きることなく怨みを抱き続けてきました。そして、その怨む相手と一緒に住んできましたが………その10年間は、ただ苦しいだけでした。怨みに思う相手がすぐそばに居るということが。そして最近、今まで以上に幸せそうに笑うその人の姿を見て、余計に憎しみが増幅しました。
どうしてこの人だけがこんなに幸せそうに笑うのだろう、と………。」
むしろ、今こうしてその話をするだけでも憎しみが溢れてくるのだろう。
穏やかな表情なのに、憎しみの宿った目だけは笑っていなくて寒気がした。
「身近な人間だからこそ、その怨みが自分自身を苦しめるんです。私はその苦しみを感じて当然の人間ですから仕方がありませんが、貴方様は違います。貴方様はただの被害者なのですから。ですから、私は貴方様に……速水徹様に、私と同じ思いはして欲しくありません。………あんな人達でも、貴方様にとっては身内のようなものなのでしょう?」
身近な人間だからこそ、その怨みが自分自身を苦しめる、か………。
彼女も、それに苦しんでいるんだろうな………。

