「それとも………皇一紗、という名前に問題がありますか?」

「っ!やはり何か知っているのか!?」



必死さが嫌という程伝わってくる形相と、私の肩を掴んでいるその手の力の強さが、速水徹様の必死さが形となって現れているように感じます。



「何か………とは、皇一紗さんと皇梨沙さんのことですか?………と、その前にその敬語口調をどうにかしていただけませんか?」



私は、貴方に敬語で話してもらっていい人間ではないんです。


そう言おうとしたはずなのに、言葉が出てきませんでした。



「わかった。それで、梨沙と一紗のことを知っているのか?」

「えぇ、勿論。とてもよく知っています。速水徹様からすれば妻と娘で、速水花音様からすれば母親と妹に当たる方……ですよね?」

「そこまで知っているのか………。」

「梨沙さんから、離婚するまでの苗字は速水だと聞いていましたから。皇は梨沙さんの旧姓だとも。
それに………一紗と速水花音様、よく似ていますしね。笑った時の顔とか、特に。」