こうして考えると、紫雨は家族仲が不仲なのをあまり隠していないようにも思える。



「しかし、一紗や梨紗さんと一緒に食事をしたことはあります。初めて一紗達と食事をした時、生まれて初めてご飯を美味しいと感じました。生まれて初めて、味のある暖かい食事をしました。」



俺から腕を離した紫雨は、目を閉じ、懐かしそうにそう言った。



「一紗達と食事をしていた時だけが、ただの寒くて義務でしかなかった食事を暖かくしてくれて、待ち遠しく思えたんです。
一条聖斗先生が仰っていることはまだよくわかりませんけど、それでもあの時のあの感覚が心の豊かさや満足感だと言うのなら、何となくは理解できます。」

「だったら、俺がお前の食事に付き合ってやるよ。まぁ毎日は無理だし、俺たちの予定が合わないと無理だろうけど、それでも一人寂しくしているから食事する気も起きねぇんだよ。だから、少しずつでもいいから飯を食え。」



俺がそう言うと、紫雨は嬉しそうに笑った。



昔、とある人に俺は懐に入れた人間には世話焼きになると言われたことがあった。


あの頃は懐に入れた人間が居なくてそんなことはないと思っていたが、あの人の言う通り、俺は懐に入れた人間には世話焼きになるらしい。



〜聖斗side end〜