「私は、駄目ですから………。」



いえ、駄目でしたと言うべきでしょうか。



例え誰に優秀だ天才だと言われようと、私では駄目なことに変わりはありませんでした。


それを思うと、あのお父様の方が私より求められ優れていると言われても理解ができます。



「何か言ったか?」

「いえ、何も………。」

「そうか?」

「はい。それよりも一条聖斗先生、私荷物の片付けがまだ終わっていないので帰っていいですか?」

「あぁ、悪い、邪魔したな。」

「そんなことは無いですよ。それでは失礼いたしました。コーヒーもご馳走様でした。」



一条聖斗先生の部屋を出て、今度こそ自分の部屋の鍵を開けて中に入りました。



私の部屋は黒を基調としたモノクロな感じで、言ってしまえば味気ない地味な部屋です。


それに加えてカーテンを閉め、高い天井から吊り下げられたシャンデリアの明かりもつけず、棚に置かれたスタンドランプの青白い光だけが灯る部屋は薄暗く、そして不健全そうな部屋です。