この俺がそんなこともわからないと、本気で思っていたのだろうか。



「よく、わかりましたね。これでも演技と笑顔には自信があったのですが………。1人にしか見破られませんでしたし。」

「お前は完璧な人間でもないし、ましてやロボットでもない。人間疲れれば顔や雰囲気に疲労が見えるし、疲れていればお前お得意の演技にだって隙が生まれる。当たり前だろう。」



まぁ、それを見破れるかどうかは周囲の人間の持つ、人を見る目にもよるだろうが………紫雨の周りには1人しか居なかったようだな。



「あぁ、一条聖斗先生は元ホストですものね。しかもNo.1になれるぐらいの人を見る目や観察力、洞察力は持っていますよね。………困りましたねぇ。」

「困ったと言う割には嬉しそうだな。」

「そりゃあ嬉しいに決まっているじゃないですか。一条聖斗先生は、やっぱり私のお気に入りだということを再確認できたのですから。」



お気に入り………。



「前から思っていたんだが、お前は何で俺を気に入っているんだ?お前と俺の接点なんてそんなに無いだろ。」

「それは………秘密です。でも、これだけは言えます。私は一条聖斗先生のとある言葉がとても嬉しかった。だから気に入ったんですよ。」