進路指導室のソファーに座って全日本学生音楽コンクールの参加申込書へ書き込みをしている紫雨の顔をよく観察すると、若干疲れているように思える。


さっき紫雨が言っていた、紫雨恭弥の仕事のサボりの尻拭いをしていて、ろくに眠っていないのだろうということは簡単に想像出来た。



「紫雨。」

「はい。」

「お前、少し寝ろ。」

「はい?」



コンクールの参加申込書に書き込みを終えたらしい紫雨にそう言えば、意味がわからないと言いたげな、困惑した表情になった。


紫雨の笑顔以外の表情を見るのは、これが初めてかもしれないな。



「どうしていきなり寝ろだなんて結論に辿り着いたのか、その経緯をお聞きしたいのですが。」

「経緯も何も、お前は上手く隠してるつもりだろうが顔に若干の疲労が見える。余程疲れているんだろうと思ったから寝ろと言っただけ、ただそれだけだ。」



紫雨は、今度は目を見開いた。