縛られし者





あえて言わずに笑みを深くして聞き返すと、一条聖斗先生は私から目を逸らしました。



「それで、俺がお前の父親の空いた穴というのはどう言うことだ?まさか病気になって倒れたわけでもないだろう?」

「お父様の空いた穴は空いた穴、そのままの意味ですよ。残念ながらお父様は行方不明でもなければ死んでもいませんし、危篤状態でもありません。」

「いやそこまで言ってねぇよ。病気で倒れたつっただけだよ。」

「病気も行方不明も死亡も危篤も、大して変わりませんよ。」

「大いに変わる。」



居なくなった、使い物にならなくなったという事実で言えば、本当に大して変わりませんのに………。



「まぁとにかく、お父様なら全く使い物にならないただのゴミ屑と成り果てました。
あの女………失礼、如月茜様との同棲を始めてからやたらと脳内お花畑で春風が吹いているお父様は、もう仕事をサボるサボる。元から仕事を面倒くさがっていた節は多分にあったのですが、ここにきてさらに悪化しまして………。」



もう見るに耐えないくらいにでれでれしていて、私の気分が悪くなってきますし。