キスしたのは最低野郎でした。

「大丈夫、ありがとう」
私は翔くんの頭を背伸びして撫でた。
「おいおいしょー、俺また好きになった訳じゃないぜ?元から好きだぞ? こいつ以外に好きになった奴なんていない」
「だからなんだって言うんだ! お前は雪姫ちゃんの害悪なんだよ! いいからさっさと消えろ!」
翔くんは私を守ろうと頑張ってくれている。その行為は本当に嬉しい、嬉しいが、
「翔くん、もうやめて」
完全復活した私は翔くんの行く手を阻むように手を広げた。
「私は大丈夫だから、翔くん疲れてるんじゃない? ちょっとがっつき過ぎだよ」
琉輝君と張り合っている際に思った翔くんの異変。いつもいる私なら分かる。
「うん、ごめん雪姫ちゃん。ちょっと頭冷やさないといけないね。学校にも早く行かないと」
気付けば周りには美少女の取り合いの観戦者で人集りが出来ていた。大人や棗高校の大半の生徒、他校の者と勢揃いだ。
「皆さんお騒がせしてしまって申し訳ありませんでした。もう大丈夫ですので集まるのはやめて頂きたいかと」
少し冷た過ぎたかな。
周りの人々は友達と話したりどんな内容だったか他人に訊いたりと自由にやっていた。私の言葉など聞こえていないようだ。
「…もう行こ翔くん」
翔くんの手を握って前へ歩を進めた。
「あっちょっと待ってよ」
不意打ちをくらった翔くんが慌てて私に合わせる。
「おいちょっと待てよ!」
その後ろを張り付いて琉輝君は不満そうに声を上げる。またその後ろにいた棗高校の野次馬も揃ってついくる。
「…これ絶対新聞載る気がする」
「僕もそう思う」
嫌な予感は当たるもの。きっと大丈夫じゃないだろう。まあ新聞に載るのも初めてじゃないのでいいのだが。

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