「おい目逸らしてんじゃねえよ」
私のちょっとした仕草に気付いた琉輝君は目を逸らすなと要求してくる。
だって、なんか琉輝君見るとドキドキしちゃって。
なんなのだろう、この胸のざわめきは。生まれてこの方人を好きになんてなったことなんてない筈なのにこの感覚が初めてではない気がしてならない。
「あー、やっぱりお前と居ると調子狂う」
琉輝君が私の胸の中に頭を突っ込む。
「ひゃわ! ちょっ… あ、当たってる!」
馬鹿! 阿呆! やだぁ、私敏感じゃん凄い感じる。
当たってる場所がアレな為ぴくぴくと体を震わす。
「お前感じてんのかよ可愛い」
そこから離れようとせずに顔だけ上げる琉輝君。
ちょっと、本当に、ヤバいから…!
「琉輝君の馬鹿ぁ!」
顔引っぱたいてやった。
知らない私は知らない。確かにまだ誰のものでもないけど! 流石に胸に顔乗っけるとかアウトだから。
私に叩かれた反動で後ろに倒れ込む琉輝君をよそに胸を守るように手を前で交差させる。
「そっ、そーいうのはダメ! 私たちまだそういう関係じゃないでしょ!」
「だからそういう関係になろうって言ってんのに断ってんのは何処のどいつだよ」
頬をさすりながら立ち上がる琉輝君。
絶対遊びでしょ! やだし!
「しかし案外力あるもんだな。いってー」
言葉とは裏腹にまた私に手を出そうとこちらに歩いてくる。そんな彼に恐れをなして後退ろうとしたが生憎と後ろはソファー。これ以上引くことなんて出来なかった。
やめて私お嫁に行けなくなっちゃうから怖いよ琉輝君。
別に真顔で迫ってきた訳ではない。どちらかと言うと笑っていた。微笑むなどの笑顔なら構わないのだが目の前にいる彼は二タニタと明らかに何か企んでいる顔を浮かべている。
「なっ、何する気!?」
「え? キス?」
いや疑問文で返さないで下さいていうか琉輝君とキスするとか嫌ですお断りですファーストキスなんですやめて下さい。
心中全力で否定したが琉輝君は本気らしい。私の高さまで腰を低くしそのまま口を重ねようとしてくる。
「え、ちょっと、へ!?」
イマイチ状況把握が出来ていない私は取り敢えず思いっ切り琉輝君を押し倒した。