ソファの上でぐったりと横たわったまま、
アタシはとろんとした目で、
天井を眺めていた。

Jは汗でしっとりとはりついたアタシの黒髪を、
やさしくなでてくれている。

「参ったな。
敵にこんなに入れ込んじまうなんて」


敵?
苦笑するJの苦みばしった顔を、
アタシはきょとんと見上げた。


「私達敵なんですか?」

「何言ってるんだ。同じ怪盗同士、商売敵じゃないか」


「あら、じゃあまるで私達ってロミオとジュリエットですね。
敵同士が結ばれるなんて」

「いや、だから......まいっか。
これも何かの縁だしな。
黒猫さん、これから仲良くしよう」

「それって、恋人ってことですか?」



「え?」



「だめ、ですか?」


「俺でいいのかい?俺は怪盗だよ?それにまだお互いのことを知らないだろ?」


「あたしだって、黒猫です。いいんです!Jさんが好きになってしまったんです」

アタシの告白にJは驚きながらも、目を細めた。
彼は、目を細めるとすごくやさしい顔になる。

だけど、しばらく考えるように返事がなく、私は徐々に不安になる。


お互いの本当の名前も、何も知らないのに。
今日知り合ったばかりで、しかもこんな形で。

なのに告白するなんて、変なコだと思われたのかしら。