だけど、
ここまで来てアタシが躊躇うのには理由があった。


自慢じゃないけど、
色白で細いけど力のある長い手足は、
歴代の黒猫の中でも最も柔軟性と運動能力に優れている。
そういって、研究所の小父様達から褒めてらってる。

そして、
美術品から歴史、
理化学から情報工学まであらゆる知識に通じて、
もちろん技術も習得してきた。

なにより、
判断力に洞察力、
そして直観力は怪盗家業には不可欠。

そんな黒猫の名に恥じない、
むしろ申し子のようだって言われるアタシ。

もちろん裏の世界に生きることを指す、
怪盗という仕事をすることへの覚悟もある。




だけど、



だけど、



どうしても我慢の出来ない事があった。



アタシは二人に、
目の前に置かれた布切れを静かに指した。





「アタシが黒猫としてこれを着れると思う?」