時計の針が夜の11時を差した時、
本部長が犬井警部と警備員達を引き連れ展示室に現れた。


「まだ、宝石は無事ですな」

「警部、
さすがの黒猫もこの警備では近づくことが出来ないのでは?」

「いや、油断は禁物です。
本来ならこんなところに出して置くのではなく、
先ほども申し上げた通りどこか金庫のようなものに入れて置くべきなのです」

「それは出来ませんな。
我が社の面子にかけても、
ジュエリー由希と同じ条件で、
展示ケースの中に置いたまま盗まれないようにというのが社長のご指示です。

それに、
このショーケースはそのへんの金庫よりよっぽど安心ですよ」


「確かに、昨日説明を受けた時には驚きました。
最近のハイテク技術というやつはすごいですな。
鍵の他に、
あなたの声紋と連結した暗証コードが必要とは」


「我が社の面子がかかっていますからな。
絶対ロミオとジュリエットは盗ませませんぞ」


本部長は、
つい2時間前に秘書の巨乳をもみしだいていた手で警部の肩をたたくと、
胸から銀色に光るカードキーを取り出した。

「それでは、
中を開けて確認をお願いします。
いつの間にか宝石がイミテーションにすり替えられる例もあるので」

本部長は、
おごそかにショーケースの台座のスリットにカードを差し込むと、
暗証コードを口にした。





その途端に、
ケースの中に組み込まれた証明が赤く点滅し、
ビル内で警報が鳴り響いた。


「なんだっ!黒猫か!?」

ビルの内外は騒然とした。