傍らでお湯が沸き、
シュンシュンとヤカンが蒸気をあげる中、
本部長は自分の唾液ごと胸を吸い上げた。


白いブラウスがべたりと肌に吸い付き、
包んでいる中身を淡く透けさせた。

アタシは、
必死に身もだえし、
本部長の手から逃げようとした。

本気を出せば、
軽いイチゲキでこの男をたたきのめせる。
だけど、
今は「秘書」としてコノ男から逃げないといけない。


感じているわけではないのに、
相手の手が、舌が、私の身体に触れるのを意識してしまう。
それを、男がその気ととったのか、ますます手の動きが大胆になってきた。

早く逃げなきゃ!



「はぁぅっ。
 だ、だめと申し上げて、
いますのに。

わ、私は、
雄一様、
付きですのよ」



「なにっ?」


恍惚として胸に吸い付いていた本部長が、
其の名を耳にした途端に我に返り口を離した。


そして、
真っ青な顔になり、アタシから離れて頭を下げる。

身を守るためなら土下座でも靴を舐めるのも平気----
そう公言してはばからないこの男は、
今まで無理に篭絡しようとしたこのアタシに向かって、
即座に保身を図った。