アタシがお茶の湯を足す為に一人給湯室へ立った時、
少し遅れてその男も立ち上がった。

そして周囲に誰もいないことを確認すると、
そっと給湯室の扉を開けて中に滑り込んだ。


「どうかされましたか?」

アタシは振り返り小首をかしげる。

大人びた身体とメイクの中に、
少しあどけなさの残るしぐさ。


質問に答える前に、
男はいきなりアタシに抱きついた。


「きゃあ、何なさるんですか!」


「シッ!静かに!
僕はここのビルを任されている本部長の今井だよ。

君も秘書課なら噂ぐらい知ってるだろう?
社長とは長年の付き合いで、
来年は専務に昇格することになっているんだ。
だから、な...」


そういいながら、
アタシの腰に左手を回して、
壁に押さえつけた。
そしておもむろに右手をアタシの胸にあてがう。

「やっ、やだっ」

アタシの胸はごつい男の手からもゆうにこぼれ落ちて、
ブラウスとブラジャーを通してさえも、
とろけるようなやわらかさで手を包み込んだ。



社内で高嶺の花である秘書課の女、
それだけでこのビルをくぐった時から男達の視線が集まるのを感じていた。

だけどそれ以上に、
アタシの顔や足、
短いスカートでラインが出てしまうお尻はもちろん、
特に胸にそそがれ、常になめるような視線に晒されていた。

フリルの多いドレスシャツを選んだので、
上着ごしでは外からは分かりにくいはずだけど、
それでもちょっとした動きで大きく弾んで存在を示してしまう。

給仕のためにスーツの上着を脱いだ時には、
あたりからどよめきに似たため息がもれた。

皆、欲望と衝動を感じたに違いないが、
この本部長は権力をもってアタシにその衝動を実行するつもりらしい。