「……100m走第3位 一色 広貴」
「はいっ」
広貴の元気な声が、体育館に響き渡った。
今賞状をもらってる人たちの声はみんな華々しくて、
段の下で拍手する私達は、まるで負け組のようだ。
7月に入り、私の身の回りは結構変化した。
一つは、制服が夏服に変わったこと。
この学校の夏服はすっごく可愛くて、衣替えを楽しみにしていた。
もう一つは、梨沙以外の友達とも話せるようになってきたこと。
そしてもう一つは、図書館を変えたこと。
私はあの日を境に、あの図書館に行くのをやめた。
もう、工事は終わっていたから、前に行ってた図書館に戻ったんだ。
できるだけ、太一先輩に会いたくなかったし、会う理由がないなら
あの図書館に行く必要がなかったから。
運良く、廊下ですれ違ったりすることも全然なくて、あの日から太一先輩に
会うことはなかった。
「以上で、陸上競技の部の表彰を終わります」
私は、総体にも行かなかった。
太一先輩が見て欲しかったのは、私じゃなくて菅野先輩だ。
観に行っても悲しくなるだけだし、太一先輩も気まずいだろうから、
私は家で密かに応援した。
さっきの表彰の感じからすると、今回もダメだったみたいだけど。