「しばらくの間、意識不明の重体。気を取り戻した今も、
両脚の麻痺が残った」


息を呑んだ。


そんなことがあったなんて。


太一先輩のあの笑顔の裏に、こんな秘密が隠されていたなんて。



「俺さ、あいつのことがずっと好きだったんだ。美人で、大人っぽくて、
俺なんか絶対手が届かねぇのに、諦められなかった」


その言葉に、今までよりも力が加わったのを感じる。


私の胸に、より一層響く。



「でもあいつは、俺を何度も助けようとしてくれた。それに甘えてしまう
自分がいた。だから、あいつが傷ついたのは俺のせいなんだ」


私は、なんて声をかけたらいいのか分からなかった。


同情してあげたい。


でも、私の心だって、そんなことできるほど
安定していない。


悲しそうな太一先輩を抱きしめてあげたいけど、太一先輩はきっと、
私に抱きしめられることなんて望んでない。



「あいつ、本当にいい奴で、毎日、ここの図書館で
ボランティアをしてたんだ」



ボランティア……。


図書館でボランティアだなんて、考えたことがなかった。



「元々ここの図書館、全然整理されてなくて、評判も凄く悪かったんだ。
それをあいつは知って、ここで本の整理を始めた」



太一先輩の瞳に、せっせと働くその人が写っているように見えた。