なんだか、胸騒ぎがする。


太一先輩が言おうとしていることなんて、検討もつかないのに、
聞きたくない、と心が言っているみたい。


それでも、太一先輩は口を開く。







「俺、好きな人がいるんだ」




ドクン、と一つ、嫌な音がする。


その後、ドクンドクンドクンと、鼓動が速くなってくる。



太一先輩の、好きな人。



続きが聞きたくなくて、思わず目を閉じる。




「そいつは今、俺のせいで入院している」



え?



意外な言葉に、顔を上げた。


太一先輩のせいで……入院してる……?


いまいちピンと来なくて、心の中で繰り返す。



「3年の冬、俺は近くの公園で暴力を振るわれてたんだ。金を出せって」



私は、神妙に頷く。



「その時、そいつは助けに来てくれたんだ。そして、そいつは
陸上部の奴らと戦ったけど、ダメだった。そいつは、殴られた拍子に
後ろにドンと倒れて、後頭部を強く打った」


太一先輩は、一度ため息をついてから言った。