全部、先輩のせいです。

そう呟いた太一先輩は、なんかいつもと違くて、
私はそれ以上踏み込んではいけない気がした。


たまに思うけど、太一先輩には私の知らない
秘密がきっとある。


何でもオープンにしているように見えて、実は自分の中に
溜め込んでる、という感じがするから。



でも、先輩のおかげで、アイデアが浮かんだ。


「私、これ描きます」



先輩に言われるまで、マングローブといえば林のような、
木々の沢山連なった場所をイメージしていた。


でも、描いていてなんかパッとしなかったのは、それだと
一本一本の個性が埋もれてしまっていたから。


沢山の足を生やしたマングローブを、私は生き生きと描いてやりたかった。



「頑張れ!楽しみにしてる」



そう、いつものように笑う太一先輩の、心の中が
気になって仕方なかった。


その時、閉園5分前を告げる音楽が流れた。



「やっべぇ」



そう言いながら太一先輩は本棚の方へ向かった。


私も、散らかした紙や本を片付ける。


太一先輩に一言言って帰ろうかと思ったけど、
見つからなかったので一人、図書館を出た。



「待って、羽花ちゃん!」