全部、先輩のせいです。

体育祭が終わってしまった今、私と太一先輩の間には
この図書館で会うことしか接点がないから。


あの日、太一先輩への想いに気づいた時から、
私は変に先輩を意識している気がする。




「何?マングローブ描いてるの?」


太一先輩が私のラフ画を覗いてきたので、急いで腕で隠す。

人に見せられるような絵じゃなかった。


「えー、見せてよ見せてーー」



無理に見ようとして来る太一先輩に、私は頑張って抵抗する。


やがて、諦めた太一先輩は私の開けていた本のページを見る。


「これ、俺みてぇ」


太一先輩は、写真を指差しながら笑った。


それは、沢山のマングローブが連なる中で、一本だけ
砂浜に飛び出たマングローブ。


他の写真にも、そういうマングローブはいくつかあって、
どれもが寂しそうだった。



でも、このマングローブは、一人ぼっちでも生き生きしていた。



まるで、自分が周りにいる人の中で一番で、自分の見せ方を
分かっているような。


周りの木々の中に、埋もれたくないと言っているような。



「太一先輩には、周りに沢山仲間がいるじゃないですか」


私には、先輩とこの木が似ているようには思えない。



「いや、一人だよ」