六月に入り、雨が多くなるに連れて、図書館の利用者数も
かなり上がった。



今日は、勉強をするのではなくて資料探しに図書館に来た。


県内で、中高生のための小さな美術展が行われるらしく、うちの学校の美術部も
出展を依頼されたのだった。


パネル部門最優秀賞受賞、という大きな盾は大きなプレッシャーにも
なっていて、先輩達からも期待されている。


それでも、頑張ろうって思え始めたのは、きっと太一先輩のおかげだ。



私の自信は、全部太一先輩が与えてくれる。



【マングローブの姿】



植物のジャンルの本棚の中から、そんな題名の本を引き抜く。


直感で、これだと思った。



この美術展のテーマは、「美しい自然」


何かインパクトがあって、迫力があって、美しいものを探していた。


並べられた本の中には、みんながよく知る植物や、「美しい」と
言われる植物が多い。


その中で、マングローブ、という案は全く思い浮かんでなくて、
刺激的だった。


それと同時に、幼い頃に見たあの幻想的な風景を思い出す。



私は心に決めて、その本を借りに行く。


閉館時間の9時まで、後1時間。


おかしいな、と思った。



いつもなら、太一先輩は7時過ぎには来て、8時には帰る。

でも、今日は姿をまだ見せてない。