「太一先輩はやめとけ」
ドクン。
唐突に放たれたその言葉に、私の頭は着いていけない。
心臓がバクバク動くのを感じる。
まるで、心の中を覗かれたようで、焦った。
「どういうこと……?何の話……?」
広貴は、曖昧な表情を浮かべる。
「とにかく。後で苦しいのはお前だぞ」
そう言って、広貴は体育倉庫とは反対側に歩いて行った。
一人になって、さっき広貴が言っていたことを思い出す。
“見てたら分かるんだよね、オレ。好きな人が誰か”
ふざけて言ったのかと思っていたけど、本当なのかもしれない。
確実に、広貴に好きな人がバレてしまった。
バレてしまった、ということまでは分かるのだけど、広貴の
言っていたことは理解できなかった。
どうして、広貴に止められないといけないの……?
気がつくと、もう辺りは暗くなろうとしていた。